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ポール・セザンヌ「セント・ヴィクトワール山」

 作家、藤枝静男に、セザンヌを憧憬する文章がある。いつか彼に、「どんな絵が欲しいですか?」と訊いたことがあった。「セザンヌ」。彼は即座に答えた。「セザンヌは高くて」。微かにシニカルな表情を浮かべながら、所持品のルオーを見せてくださった。
 小林秀雄など日本の文学者はセザンヌが好きである。なぜかは、わからない。時折、私はブリジストン美術館を訪ねる。そこには、セザンヌのセント・ヴィクトワール山を描いた作品がある。その絵を見る度、肌が戦慄する。風景画であるのに、純然とした抽象画を見ているような感じがするのだ。「色彩の価値は、他の色との関係にしたがって変化すること」。ベンヤミンは記した。セザンヌの色彩のタッチは、まさに「他の色との関係」がもたらす「感覚の広がり」を見る人に与える。
 文学は、自我と世界との泥臭い戦いで成り立つ。だから、セザンヌの限りなくピュアな感覚に惹かれるのかも知れない。

 

浜松百撰 2009年8月号

 

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