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カンディンスキー「黄色の小品」

 昨夏、サンクト・ペテルブルグ大学に招聘された折り、エルミタージュ美術館やロシア現代美術館に案内していただいた。多くの優れた絵画の中で、心を新たにした作品に出会った。ワシリー・カンディンスキーである。両方の美術館に彼の作品が多く所蔵されていた。以前から彼の作品に惹かれてはいたが、どこか相容れない感覚がいつも残っていた。その違和感は、日本という湿気た風土に住む人間の「情緒」だったのでは、とその時思えた。
 カンディンスキーの絵からは、純然たる感覚の饗宴があふれている。この「純然」が厄介なもので、言葉で説明するのは難しい。「音楽のような絵画」と、彼の作品が評されることがある。だが、的を射ているとは思えない。「音的」なものだけでなく、彼の求めているものは、「総合的な感覚」にあるようだ。計算された「色彩」と「形」が私たちに告げるのは、「絵画としての演劇」のようなものだ。

 

浜松百撰 2009年9月号

 

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