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アルベルト・ジャコメッティ「芸術家の母 1965年」


 ジャコメッティが、再び脚光を浴びている。一度目は、大戦後の陰鬱な時代に。そして極度に進んだ資本主義の今。大きな戦争の後、人々は「人間性」への懐疑を募らせた。時代の代弁者のように、ジャコメッティの作品はアートシーンを彩った。このアーティストが表現する人物や物は、極度に「痩せて」いる。「痩せる」というより、空間に圧迫されているように見えるのだ。そこに人々は、同時代性を感じたのかも知れない。   
 時が変わった。彼の作品を見ると、時代の視線では見えなかった「表現そのものの快楽」が、見る者の感性をゆする。モチーフと空間が親和している感覚を覚えるのだ。時代に埋没してしまう画家は、多い。だが、時を越えて見る者に語りかける作品は、すでに古典である。古典から私たちが感じるものは、「見ることの快感」ではないだろうか。

 

浜松百撰 2009年12月号

 

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