中西美沙子
ごあいさつ
プロフィール
講演活動
執筆活動
対談・座談
つかまえて!こころ
中西美沙子が主宰するホームページです。
あわせてご覧ください!
画廊キューブブルー
画廊キューブブルー
文章教室スコーレ
文章教室スコーレ
静岡県浜松市中区
元城町 219-16
TEL: 053-456-3770
FAX: 053-456-3795
マップ
お問い合わせはこちらから
ホームへ

ジャクソン・ポロック(1912〜1956)
「無題(ブルー、イエロー、レッドの上にグリーン)」 1954年

 絵を見る距離、というものがある。その距離は、画家が作品を仕上げるときに眺める距離に、等しい。ゴッホの麦畑は、彼の自然に対する距離の絶対性そのものだ。私たちは絵画を鑑賞するとき、作品に近づきまた遠ざかりしながら、見る位置を確かめる。その行為は、描いた人の目に近づこうとする無意識でもある。

 ポロックの作品を見ると、しばし戸惑うことがある。それは極度に作品に近づくことを要請するものがあるからだ。眺めるのではなく、作品の内部にまで視線を誘うような情動。それは、「見ること」と「見られるもの」の距離の消失である。抽象化された形象が纏わりつく独創的な世界が、ポロックなのだ。

 ポロックは、アルコール依存症であった。酔った彼を載せた車は、街路樹に衝突し、大破した。かくしてポロックも、「物」になったのだ。人の物語と、残された作品は違う。だが彼の作品を見ると、彼の抱えていた情念の物質性を感じてならない。

浜松百撰 2010年12月号

 

Copyright(C) 2004 Misako Nakanishi. All Rights Reserved.