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殺風景な家庭もっと魅力を

野沢順子

 コンビニを出てさまよった後、少女が殺された事件があった。
コンビニの周りに群れている子どもたち。塾帰りなのか、制服を着ているところを見ると、まだ家に一度も帰っていないのか。夜遅くまで話し込んでいる。家に待っている大人はいないのだろうか。家に帰りたくない事情があるのだろうか。
 今の時代、大人も子どもも忙しい。仕事に、塾に、おけいこごとに、遊びに。家族がそろって食事をする家庭が今どれだけあるのだろう。時間に追われて、ゆっくり家で座る心の余裕もないのでは。家はただ眠るだけの箱になってしまっている。そんな殺風景な所に一人でいるのが寂しくて、子どもたちは明るいコンビニに、何となく集まってしまうのでは。そこには同じような気持ちを抱えた子どもたちがいるから。
 親が働いていて誰もいなくても、食事のにおい、父や母のにおい、だんらんのにおいが残っていれば、たとえそこに親がいなくとも子どもは安心して待つことができるのではないだろうか。何もない不安感が、誘蛾(ゆうが)灯のように子どもたちをコンビニに向かわせるのではないか。

中日新聞
2004年7月18日掲載

 

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