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不幸の理由(わけ)その2 | |||
静かなしっ責と愛情 |
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![]() 古くから友人の警察官は「子どもを殴る親が減った代わりに、無関心や、子どもとの変な共犯関係を作る親が増えているのだよ。親が迎えに来て、事情を説明すると声を潜めるように『お前はばかだ。分からないようにすればいいのに』っていう親もあるんだからな」と話を続けた。「問題は子どもが起こすが、本当の問題の根っこはおれたち大人の方にあるのだろうな」。彼の分析に、私もうなずいていた。 「もと先生のあんたには悪いけど、嫌なことがあった。問題を起こした高校生がどうしても親の名前や住所を言わない。気長に待つとやっと学校の名前を言った」。私は「先生に悪い」と前置きした彼の言葉を計りかねていた。「電話を掛けるとすぐに先生がやって来た。それも校長から教頭、生徒指導課長っていうやつから、学年主任に担任と、大勢でぞろぞろやって来た」。思い出したのか彼の目が笑っている。しかしその目はすぐに硬い表情に変わった。「来るのはありがたいが、誰もその子の方を見ようとしないし、声も掛けないのさ」。半分あきれ怒った口調で、「彼らはその子に興味が無く、どんな問題を起こしたか、学校の名誉ばかり気にしている。たった一人でも怒ったり『どうした』とこの子に声を掛けてくれって願ったよ。あんたには悪いけど学校すらこんな風に変わったのだ」。 私はその少女が取調室の中でぽつんと孤独を抱いて、うずくまっている姿を想像していた。彼が言ったことは学校のすべてを語っているのではない。が、私は先生たちの視線が何を見ているのか、を恐れた。その視線の先は、子どもたちの「不幸の理由」を見ていないことだけは確かだ、と思ったのだ。
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