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病める天才たち
オーストラリア、ウィーン郊外にある「芸術の家」。そこでは１０人の画家がそれぞれに自由な時間を過ごしながら共同生活を送っている。いずれも中年を過ぎた独り身のアーティストたちはみな心の病を持つ。壁にも絵を描き上から何度も塗り直す男。6千年前から生きてきたと信じ自分の歴史絵巻を綴る男。手足のない人間ばかりを描く男。彼らの描くものには、自己の内側に構築された世界が素朴で斬新表現されている。ヨーロッパの画壇で天才と呼ばれる作家たちの奇妙で優しさにあふれる日常を、秋から冬のウィーンを背景に美しく静謐な映像の中に描き出す。 ■
芸術家の家とは
美術教育を受けない子供たちや、精神を病んだ人々によって生み出された作品は「アールブリュット＝野生の芸術」と呼ばれ、近年日本でも注目され始めている。ヨーロッパでは1920年代からその芸術的価値が認められてきた。この映画の舞台となる「芸術家の家」は、ウィーン郊外グギング村にある神経科病院の敷地内にある。病院の医師であったナブラティル博士が芸術的な才能を持つ患者たちのために1981年に創設した。以来グギングのアーティストたちの作品は欧米各地の展覧会で紹介され、注目を集めてきた。中でも人気の作家チルトナーの作品は1号2万ドルという高値がつく。アーティストたちはそれぞれに自分の口座を持ち、売上の一部で「芸術家の家」の運営がまかなわれている。 | 
