鈴木貴彦展● 卓 - or lost in translation2006年
3月 11日 (土)〜 3月 25日 (土) コミュニケーションって?
会話の中で発話者の意図はその受信者に絶対に正確には伝わらない。むしろ、その情報の意味は情報の受信者が決定する。もしくは受信者がその意味を勝手に作り上げると言い換えても良い。 これはコミュニケーションの不可能性を語っているのではなく、単にコミュニケーションの基本的な性格を述べているに過ぎない。人は永遠には生きられないという真実がある。だからといって全ての人が自暴自棄に生きているだろうか。コミュニケーションの難しさを語ったとしても私たち全てがコミュニケーションを諦めるということはありえない。
このインスタレーションはここからスタートしている。情報の意味を受信者のみが作り出すのだとしたら、受信者に送られる情報は実際には意味が無くても良いことになる。ノイズである。「"意味がない"という意味だけを持っているもの」を仮にノイズと呼ぶと言ってもいいかもしれない。 このインスタレーションはシーツで覆われたテーブルセットの中に蛍光灯とラジオが仕込まれている。蛍光灯は変圧器によって常に不規則に点滅している。ラジオは、その蛍光灯の点滅の際に発生させる電気ノイズを受信して蛍光灯の点滅とシンクロして音のノイズを発声している。展示会場は点滅する蛍光灯の光によるノイズとそれと同期して聞こえるラジオによる音のノイズに満たされている。
意味を見いだしようもないノイズと対面して、そこからどんな意味を構築することができるだろうか。普段私たちが何気なくしている意味の創造を少しだけ意識的に行うことができる装置としてこのインスタレーションは作用しただろうか。 |