中津川浩章 展
2006年11月3日(金) - 11月19日(日)
感覚は、いつも閉じられてある。それはものの詐称性が,私たちに不断に立ち現れる証としてあるからだ。旅から帰ると、自分を成り立たせた風景や器物が他者性を帯びて見えることがある。質量と形相が、私たちに与えていた「見ることの欺瞞」を強く意識させるのだ。そのように人の感覚は、閉じられる宿命を負っているのだ。 中津川浩章の作品を見ると、日常に棲むそのような感覚の虚無を穿ち、隠された本来的な感覚を呼び戻す意思を強く感じる。しかしそこには直接性やパッションが赤裸々に刻印する表現ではなく、周到な手順と方法が隠されている。見えたことの置き換えである。作家の感覚に纏わる狭雑物を、そぎ落とすことから狂言が始められているのだ。作家の作品が緊張感を強いてなお静謐を留めるのは、そこに秘密がある。その静謐が「閉じられる感覚」を破り、見るものを「開かれた地平」に誘うのだ。
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