中西 | 「患者の安心」を考えると、問診は重要な医療行為だと感じます。医療機器に頼りすぎ、問診をおろそかにする傾向があるように思うのですが。どんな問診が望まれますか? |
室久 | 患者さんの思いを「聞くこと」が大切ですね。患者さんは不安を抱えてやって来ます。症状だけでなく不安感を「聞くこと」から始めるのがいいでしょうね。 |
森田 | 病気を治すことで得られる安心が本来のものでしょうが、「訴えを聞く」だけでも、患者さんは安心します。私の専門である循環器内科では、胸の動悸(どうき)や痛みという症状で来られる方が多くいます。これらの症状はメンタルなものが引き起こしているケースも多々あります。検査後、問題がないことを説明すると症状がなくなることでわかります。 |
中西 | 医療機器などの進歩からか、世代の問題か、問診の仕方が大きく変わったように思えます。患者の顔を見ないでパソコンの画面だけ見て問診をするケースが増えているのでは? |
室久 | 問診は患者さんからの情報を集めるだけではありません。患者の性格や心理状態を知る上でも欠かせない医療行為です。人は皆、異なる身体と心を持っています。それらを把握することで、最善な治療行為が生まれるのではないでしょうか。単なる「hear」でなく「listen(傾聴)」です。その意味では、「傾聴はCTに勝る」とも言えます。 |
森田 | 病気をいかに早く見つけ出すか、それには「患者の話をよく聞くこと」と「聞き出すような工夫をすること」が大切です。私は不安そうな患者さんに対して、「気になることはないですか?」とまず問うことにしています。そのためにはリラックスできる環境が必要ですね。患者さんの訴える症状を「見逃さない」「聞き逃さない」よう、細心でありたいと思っているのです。 |
室久 | 近ごろは聴診器を使わない医師が増えています。聴診器は重要なものと考えています。それは物理的に音で患者さんの肺や心臓の所見を知るだけでなく、人間的な温かさを患者と共有することができるからです。患者さんとの距離が近くなることは、大切なことです。医療は人間があって成立するのですから。 |