外国に行くと、いつも感じることがある。そこに住む人たちの持つ「土地の重力」だ。「生きる根拠」と言ってもよい。
ブルガリアの首都ソフィアに滞在した。静岡大学と学術協定を結ぶ中東欧十一カ国との国際会議「インターアカデミア」に出席するためだ。アカデミアは今年で十二回目。国の垣根を科学が越える、そのような親近感と柔らかな雰囲気にあふれている国際会議だ。
ソフィアはヨーロッパ最古の街。ソフィア大学のたたずまいも、その歴史に合わせたように荘重な趣が漂っていた。ブルガリアは経済の先端の国ではない。が、キャンパスを歩くと、「学ぶこと」と「経済」の本来のあり方への、痛切な反語を日本に感じた。
ソフィアは「人」と「自然」そして「文化」が、ごく自然に共存している。ゆったりとしたトロリーバスと市電が、行く。人の歩みも、時を忘れたように見える。大きな木が街を囲むようにあるからか、人や物音が静かだ。日本は喧噪(けんそう)の国だとあらためて思う。経済がどんなに膨らんでも、人の精神はいつか劣化する。将来、人間が生き残るのは、ブルガリアのような国かもしれないと思えた。
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