フェルメール「真珠の耳飾りの少女」 なぜ、今、フェルメールなのか?フェルメールを見ると、私は「迷宮」に踏み迷ったような不安を覚える。プルーストは、フェルメールの「デルフト眺望」を風景画の白眉と絶賛した。それは「そこに在る風景」ではなく、「普遍の都市」をその絵に見ていたから。毒舌で名高いダリも、彼を「地球最高の画家」と称える。ダリの採点簿では、ルーベンスさえ「つまらない絵描き」となるのに。優れた作家や画家を惹きつけるフェルメールの魅力は、掴もうとしても掴みきれない世界が彼の絵の中にあるからだろう。 彼の生地はオランダのデルフト。17世紀の彼の時代は「商人」の時代であった。宗教や神話を中心に描いていた画家たちは、「個人的」なものを描き始める。この「真珠の耳飾りの少女」の目の輝きにも、私は「人の息吹き」を感じてならない。写真のシャッターが切り取る一瞬の「時」。フェルメールは、その「時」を、「稀有な時」に置き換える。 |