ジョージア・オキーフ「オニゲシ」 オキーフの描く花は、すでに花ではない。花々の形と滑らかな質感だけが、花の残像として、在る。彼女の花の絵から感じるものは、私たちが見失った様々な感覚の、再生への手招きだ。日常の中で私たちは習慣のように花を愛でる。しかし花の持つ要素への関心は、薄い。日常とはこういうものだろう。人は穏やかな眼差しで、花を見る。 オキーフ、或は画家たちは、「狂気の人」でもある。禁断の領域に踏み込むのが優れたアーチストだろう。私たちの眠った感覚が、「オキーフの花」によって呼び覚まされる。そのことで、私たちは彼女の絵の前にしばし佇むのだ。 オキーフは、花の形態と質感の著しい拡張により、「新たな感覚」を私たちにプレゼントする。ランボオの『イリュミナシオン』にある「眼ある花々」というフレーズに繋がる感覚を、私はオキーフの花々に見る。
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