モランディ「静物」1960年 「反復」。繰り返し同じモチーフを描き続ける画家がいた。イタリアの地方都市、ボローニアにモランディは生まれ、その地で幕を閉じた。どこにでもある生活雑器が、モランディのこよなく愛したモチーフである。チェスの駒のように配置されたそれらのモチーフは、私たちが慣れ親しんだ構成からは遠く隔たっている。
モランディの作品を眺めていると、彼の眼差しが掴もうとしているのは、「普遍的な感覚」だと分かる。モランディの絵は、雑然と感じられる物の「配置」と沈んだ「色彩」で成り立っている。それらが語りかけてくるものは、純然たる感覚の復活と、周到な、古典への現代的な回帰であろう。モランディの「反復」は、厳密な美への接近が欲望としてある。そこに、詩人ヴァレリーが、数学のような詩を求めて詩作したことが重なる。見えないものの中から「感覚」を掘り出す作業に従事するものがアーティストであることを、モランディは改めて、私に告げる。
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