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サイ・トンブリ「5.
Untitled, 2001」 | | 私たちは、形や色にいわれなく惹かれる。だが、具体的な形や自然の色彩に近いものを見ると、より安心する。トンブリを代表する抽象絵画は、その安心を放棄したところから始まっている。なぜなら、色や形の純然たる感覚を、見る人に示したいからである。具体的な形や色は、見る人たちを先入観で縛る。トンブリの絵画は、子どもの悪戯書きのように感じられる。だが良く見ると、知的な操作と身体との、絶妙なバランスで描かれていることがわかる。誰でも描けそうで描けない絵、それがトンブリである。彼固有の色彩の輝き。それは、「動く形」とともにある。カラーリストのマチスの絵は、静止した色面と色面の、親和や異化でなりたっている。私がトンブリの絵に惹かれるのは、「動く形」と「色」が分離されないところから発信される、感覚の新しさであろう。
浜松百撰 2010年1月号 |
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