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ルドン「花の中の少女」(1909〜10)


 内なるものを見る。ルドンの絵から感じるものは、その感覚である。「内なるもの」は、精神的なものではなく、花や種子、または鉱物の中に潜む微視的な世界からの視線のあり方である。原子とそれを言い換えてもよい。私はルドンの絵を見ると、そんな思いに襲われる。自分の目が花の内部にあり、そこでじっと繰り返される感覚の営みを見ているような気がするのだ。 ルドンは仏教に関心があったのか、仏陀を描いている。だが私は、仏陀が持つ思想性ではなく感覚の涅槃のようなものを感じてしまう。仏陀は、「一粒の蓮の実の中に、全宇宙がある」と説いている。ルドンの絵は、私に、蓮の実から見える世界を暗示して、なおあり余る。小さきものたちが持つ無限の輝きを。
 奇しくも、ルドンが植物学者になることを夢見ていたことを、この稿を書きながら知った。顕微鏡を覗きつつ、そこに広がる世界に狂喜するルドンが、彼の作品に重なった。

浜松百撰 2010年3月号

 

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