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ジョルジュ・ルオー「郊外のキリスト」


 印象深いルオーが、ブリジストン美術館にある。「郊外のキリスト」と題された作品。夜景のように青ざめた往来に佇むイエスと、二人の人物。それらは、ルオー自身の似姿のようだ。ルオーは宗教画家と言われる。が、本来は過激な情念の表現者であった。脂ぎった娼婦を描き、裁判や法廷などをテーマに、人間の生々しい現実を描いた。
 ルオーの絵には、彼独特の素材感がある。色を鏝(こて)で塗り込めたような感覚である。その効果が伝えるものは、彼の情念の深さではないか。
 「決定的な真理を見つけたのです。空を背にした一本の樹木が、人間と同じ性格と表情を持っていることを」。ルオーは友人のシュアレスへこのような手紙を送った。この精神の極みのような言葉から連想することがある。それは「描くこと」より「塗ること」を表現に選んだ彼の姿勢である。「塗ること」は、願いや救済へと繋がっているように私には思えてならない。

浜松百撰 2010年5月号

 

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