中西美沙子
ごあいさつ
プロフィール
講演活動
執筆活動
対談・座談
つかまえて!こころ
中西美沙子が主宰するホームページです。
あわせてご覧ください!
画廊キューブブルー
画廊キューブブルー
文章教室スコーレ
文章教室スコーレ
静岡県浜松市中区
元城町 219-16
TEL: 053-456-3770
FAX: 053-456-3795
マップ
お問い合わせはこちらから
ホームへ

マン・レイ「天文台の時間――愛人たち」

 顔を隠す。その行為は、「恥ずかしい」という感情の一つの表れであろう。マスクをつけると人は、どこか不安になる。それは隠すことが反対に、「見られている」という感覚を呼び覚ますからだろうか。「見られること」は、羞恥心を生み「不安」を広げる。
 マン・レイの作品を見ると、そのような感覚におそわれる。見る人に「不安」を強く印象づけるのだ。それは「不安」が彼の友であり、鑑賞者に贈る鋭いメッセージだからだろう。
 マン・レイの生きた20世紀初頭は、変化と戦争の時であった。絵画の変革と機械産業の興隆。その大きな波のうねりの中で誰もが、人知れず「不安」を抱えていた。彼は写真や映画などの新しい表現を積極的に取り入れ、時代が持つ「不安」を巧みに表わしていった。
 「不安」は、決してマイナーな感覚ではない。今と未来とを掴み取る感覚の鮮やかな姿勢であるのだ。マン・レイのウイットに満ちた「不安」は、私に、そう告げる。

 

浜松百撰 2010年6月号

 

Copyright(C) 2004 Misako Nakanishi. All Rights Reserved.