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中東での悲劇早い終結願う

高木恵美子

 正倉院に伝わる奈良時代の宝物「酔胡王面(すいこおうのめん)」の復元が、完成したそうだ。ペルシャ王の酔って赤い顔を表現したものだそうだ。異国情緒漂う真っ赤な彫りの深い顔立ち。その真ん中のでんと座った大きなわしっ鼻、ギョロリとした目玉をむき出し、馬の毛で作った黒い勇ましいひげをつけ、頭には鮮やかなエメラルドグリーンの唐草模様の帽子をかぶっている。
 この面が、シルクロードを通って生みを渡り、はるか東のこの日本にたどり着いたことを思うと想像が膨らむ。
 くしくも面の復元が発表された四日、ペルシャ(現イラン)の隣国イラクの少年が、目の治療のために沼津に到着した。その陰には取材先のイラクで銃弾に倒れた民家人の橋田さんと小川さんお二人の尽力、それを支えた心温まる市民団体の協力があった、と思う。
 昔から深いつながりのあった中東の国の民衆が今、戦争やテロの犠牲となっている。これ以上悲劇が起こらぬよう、早い終結を願うばかりです。
 そしてモハマド君の視力が、一日も早く戻ることを心からお祈りします。星のように輝く両目で、日本一美しい富士山や、白砂青松の沼津の海をぜひ見てください。もし、モハマド君が、酔胡王面とにらめっこしたら、どちらが勝つかな?

中日新聞
2004年6月10日掲載

 

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