短冊に願い事 遠い日の記憶朝倉初美(中1) 私がまだ幼いころ、家で七夕の飾り付けをした。近くの林で母がササを取ってきてくれ、弟と一緒に、短冊に願い事をたくさん書いてササにつるした。「上手に字が書けますように」「頭が良くなりますように」。その時の書いた願いは、今も忘れてはいない。夜になると、ササを家の外に出して、大きな天の川を見上げた。願いがかなうといいな、とドキドキした。
中学生になった今、もう七夕祭りをすることはなくなった。夜空を見上げてすらいない。この前、学校からの帰り道、どこかの家の前で、短冊がいっぱいつるされたササを見掛けた。「ザリガニちゃんが元気でいますように」。短冊の願い事を見て、私は思わずほほ笑んでしまった。
今、私は忙しい日々を送っている。塾やら勉強やらに。短冊に願い事を書いたのは、遠い日の、貴重な思い出のような気がする。たまには夜空の星を見上げてみようかな、と思った。 中日新聞
2004年8月6日掲載 |