心と心つなぐ思いやり大切高木恵美子 「コミュニケーションは言葉のキャッチボール」
その言葉を聞いてくぎづけになった。 元プロ野球投手の村田兆治さんの「課外授業」の番組だった。小学校高学年の子どもたちが運動場で、二人一組になってキャッチボールを始めた。最初はボールがそれて、相手に届かず、うまく取れなくて四苦八苦。その光景に村田さんは「君達は、どうしたら相手がうまく取ることができるか、考えて投げているか?」と質問した。
子供たちは黙ったままうなだれ、その場がシーンとなった。自分が上手にボールを受け取ることより、相手の取りやすいボールを投げること。それには思いやりの気持ちがなければ、キャッチボールがうまくはなれない、と続けた。
近ごろ、人間関係がうまくいかないと悩む人が多いとはこのことだと感じた。自分のことばかりを一方的にしゃべり続けたり、メールやパソコンで絶え間なく送り続ける人たち。たくさんの量の言葉や文字は空間を漂うだけで、相手に自分を理解してもらう解決策にはならない。相手を見ながら、伝えようとする真剣な気持ちがなければ、伝わらない。
番組の後半には、相手のことを考えながらボールを投げ合う子どもたちのグローブに、ボールが入った時の喜ぶ顔、顔、顔が映し出された。そのとき、村田さんの「心と心がつながったのだ」とおっしゃった言葉が忘れられない。 中日新聞
2004年9月5日掲載 |