ようこそ世界合唱団へ

河合奈々瀬 (高３)

ご覧あれは独唱の国
ここは世界合唱団
長い長い発声練習の彼方でようやく僕らはめぐり逢えた
賛美歌でもあり哀歌にも聞こえる
未知の調べかもしれないし抹消された言の葉かもしれない
指導者のいない僕らの合唱団は今以てこの歌を完成することができない
かすかに響くあのビロードのソプラノは飢餓の国から
けたたましい銃声のテノールは飽食の国から
宇宙がせっかくがんばってこの蒼いステージを予約してくれたのに
歴史がせっかく休日返上でみんなを集めてくれたのに
「どうしてこんなにまとまらない？」
僕の疑問に世界が笑う
「私たちも独唱、君も独唱」
あぁそうだ
僕は隣人の声を知らず隣人も僕の声を知らない
僕らはいつも同じ旋律で立ち止まる
けれど僕らは知っている
この歌がいつか永遠になることを
この秋桜(こすもす)のハーモニーが宇宙(こすもす)に広がることを
さぁ君もそっと声量を上げます
ご覧あれは合唱の人

　　　　高校生新聞社・国学院大学主催
第９回　全国高校生　創作コンテスト　現現代詩部門　最優秀賞

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